英語学習の昔と今

今は昔、私がまだ学生だったころの話です。

大学受験を控え、某大手予備校に通っていました。
難関国公立・私立大クラスに在籍し、 何人かのカリスマ講師の授業を受けましたが、それはどれも、色々な記号を使って、まるで文章を解剖するかのように、文の構造を読み解く、というものでした。例えば、関係代名詞を使っている文章の場合、「関係代名詞を◯で囲み、それ以下の部分を括弧でくくって、後ろからここに掛かっているね」、と先行詞に矢印を引く。ですので、テキストは、記号の書き込みだらけ。

当時の英語の試験では、日本語訳を求めるものも多かったので、塾での英語の授業も、これが一般的だったのでしょう。日本語と英語とでは語順が異なりますので、英文を分解し、日本語らしく訳すのには、上述の方法は有効かもしれません。しかし、こういった方法が可能なのは、 読み返したり書き込んだりできる 紙ベースの英語問題に対してだけであり、リスニングやスピーキングでは通用しないことは、みなさんもお分かりでしょう。

これまでの高校受験や大学受験では、リーディング、ライティングでしか 英語力は測られることがなかったため、「音」を置き去りにした上述のような学習方法が中心でした。それが、今変わりつつあります。
「聞く」「読む」「書く」「話す」の英語4技能の強化が盛り込まれた 新学習指導要領が全面実施されるのに伴い、急ピッチで教育改革が推進されていることは、みなさんもご存知のことと思います。
かいつまんでお話しましと、
2020年度から、 小学5・6年生は「教科」として「英語」の授業が始まります。
中学生の新学習指導要領の実施は2021年度から始まり、授業はAll-English となります。 習得語彙数は、現状の1200語から1600~1800語に増加しますし文法事項も、従来は高校過程で取り扱われていた仮定法や原形不定詞といった内容が、前倒しで中学で学ぶ内容に加わります


高校や大学の入試が4技能を測る試験内容に変わることで、これからの受験生に求められるのは、従来の暗記型の学力や、英文を和訳することに終始するような力ではなく、 英文を聴いて全体像を掴みとるリスニング力、長文を速読し文意を理解する読解力、 「書く」「話す」ための アウトプット力などの総合的な英語力です。
こうした総合的な英語力は一朝一夕では身につきません。日々コツコツと、しっかりと基礎を築き、力を培う必要があります。

英語が言語の一つである以上、「音」を切り離して学ぶことは、不自然であり、「読む」「書く」ことだけに重きをおいた従来の学習形態は、云わばいびつな形でした。
教育改革の中に身を置くこれからの学生さんは大変ですが、本来あるべき英語学習の形態に やっと近づいてきているように思います。

今回の教育改革をきっかけに、「聞く」「読む」「書く」「話す」の英語4技能 をバランス良く伸ばしていくことで、「英語脳(英語の回路)」も鍛えられるでしょう。「何年も英語を勉強してきたのに、英語ができない」という方が今後は減っていくのでは、と期待します。


”Onwards and upwards”  の精神で、英語力を磨きましょう!